第22回日経ニューオフィス賞 受賞オフィス紹介

日経ニューオフィス賞

株式会社 前川製作所 新本社ビル

法人データ

企業名・団体名 株式会社 前川製作所
所在地 東京都江東区牡丹3-14-15
オフィスの種類形態 本社 新築 自社ビル
オフィスの延べ面積 9,309.8m2/520人
業種 その他製造業
使用開始時期 2008年5月
社内の推進部 株式会社 前川設計
建築設計 大成建設株式会社
一級建築士事務所
オフィス設計 大成建設株式会社
一級建築士事務所
株式会社イトーキ
建築施工 大成建設株式会社 東京支店
オフィス施工 大成建設株式会社 東京支店
株式会社イトーキ
URL
http://www.mayekawa.co.jp/
その他
求人情報

オフィス写真

  • 多目的スペース
  • 一般執務スペース
  • 一般執務スペース 中階段
  • 会議室(地域交流施設)

「すみわけ」による市場環境への順応・変化

1924年、マエカワは産業用冷凍機の製造からスタートし、冷と食の分野において顧客のニーズにお応えする活動を続けています。マエカワは企業は生物体と考えており、生物体が自然環境で生き残るための「すみわけ」を企業が市場の中で行うために、変化する市場環境に対応し、自らも、かたちを変えていく必要があると考えています。1970年代から1990年代までは「独法(企業活動の最小組織を独立法人企業として独立させること)」という組織体制により、市場へ浸透し、きめの細かいサービスを展開してきました。1990年後半から21世紀にかけて、情報化社会の急進とともに、顧客ニーズは多様化・広範囲化・複雑化しました。そうした市場に対し、2007年、マエカワは「一社化」し、全社の知・技を集結して市場との融合を図ることになりました。この大きな変化と同時期に新本社ビル新築計画のプロジェクトが発足し、地球環境に配慮した、21世紀にあるべき本社ビルの姿とともに、一社化による「すみわけ」に対応する新しい環境(ワークプレイス)の模索が始まりました。

マエカワの「共創」によるモノづくり

マエカワは「独法」の時代から、「共創」により、社内、顧客と個々の感覚知を共感、合成することで新しい知を創造してきました。一社化され、新本社に集結することで、全社的なコミュニケーションの向上により、共創による知識創造の強化を図ります。

新本社ビル建設 基本コンセプト:3つのC

「もっと、Good Communication Office」
個々がもつ感覚知を共有し分散と集中を繰り返しながら新しい価値を生み出す「共創」。組織や場所の壁をなくし、全社的にあらゆる場面で自由なコミュニケーションが可能なオフィス。
「わくわく、Knowledge Collaboration Office」
今まで培った多くの情報、知識、技術の蓄積、そして伝承。社内におけるあらゆる障壁を取り払って「知」と「場」を共有し、時代を切り開くエネルギーの源となるような「わくわくするオフィス」を実現したい。
「ほっと、Secure & Comfortable Office」
マエカワという共同体が安全に、安心して快適にモノづくりに取り組める物理的な環境の整備。また地球環境と一体である企業として地球環境破壊に対する配慮、さらにマエカワ発祥の地「深川」への貢献、地域住民との融合にも配慮したい。

「もっと、Good Communication Office」【コミュニケーションの活性化・創造性】」

水平軸(部門内)と垂直軸(全社)の移動によるコミュニケーションの強化

執務フロアは「風通しのよいコミュニケーション空間」を実現するため、間仕切りを使用しておらず、一体感と開放感を高めています。フロア内では、窓側に打合わせテーブルを配置し、その両端にキッチンを配置することで東西(長手)方向の往来が生まれます。この水平軸での移動によるコミュニケーションでは主に専門分野での感覚知の合成が行われます。更に執務フロアをつなぐ吹き抜けにつくられた中階段により、垂直軸(他フロア)の移動が容易になります。これにより、他部門とのコミュニケーションが円滑になり、異分野の知識、情報に触れることで個々の感覚知は研ぎ澄まされ、価値創造へと向かいます。

「わくわく、Knowledge Collaboration Office」【創造性を高めるワークプレイス】

各フロアにおける分散(広がる)と集中(まとめる)の行き来

ワーカーは、ひとり、もしくは共創の中で分散と集中を繰り返しながら感覚知を醸成し、論理知化していきます。したがってオフィスにはそれらの場面の切り替えを可能にするワークエリアが必要になります。

ニュートラルな創造空間

ワークスペースのデザインは、極力、シンプルで機能的なものを採用しました。創造の源となる、さまざまな個性をもった感覚知に対し、空間のデザインは平等でニュートラルなものである必要があるからです。

「ほっと、Secre & Comfortable Office」【生活の場・ゆとり・快適性】

外部環境との一体化を意識した全面ガラスの窓面

外部環境との一体化を意識した全面ガラスの窓面(写真2)
全面ガラスの窓を通して深川の運河と周辺の町並みがパノラマ状に広がるオフィスは、その延長上にあるかのように、四季や時間の経過を感じることができます。それはワーカーにとってのゆとりであり、「環境との融合、一体化」というマエカワの理念を表しています。

スケルトン天井による開放感の確保
法規上の建築物高さ制限の中で必要階数を確保し、階高に制約 を受けながらも、天井高の開放感を維持するため、デッキプレート表しのスケルトン天井を採用しています。
全面床吹出空調システムの採用
天井が高いため、居住域を効率的に空調するのに効果的な床からの吹き出し空調システムを採用しています。通気性カーペットにより、吹出口からの不快なドラフトを防止しています。
マエカワ 共同体を守る安心・安全オフィス
受付、入口フラッパーゲート、カードによるセキュリティ管理を充実させ、外部から不法な侵入に対しガードを強化しています。また、免震構造 (ハイブリッドTASS構法)の採用と72時間電源供給可能発電機の設置、防災備蓄倉庫の設置など災害時に対する安全性、対応の強化を図っています。

ノパの目

独自の経営哲学「共同体」「すり合せ」「場所性」「すみわけ」をコンセプトとした、企業の優位性「独法」〜「一社化」を展開することを目的に、職人気質なワーカーや顧客の持つ感覚知を論理知化する、空間や制度、文化や風土を構築・継承する、創業の地に建てられたオフィスである。
20年前からの経営理念である「共創」は、社内、パートナー、顧客、地域等とのコラボレーションから価値を創造するという考え方で、水平軸・垂直軸のコミュニケーション空間を中心に、実質定年ゼロ制度による経験豊富なワーカーと若いワーカー、また、パートナーや顧客、加えて、地域と一体化、下町文化の交流から、自然に感覚知が共有され、論理知化されて行くオフィス環境となっている。
情報社会の市場環境に適応する経営戦略である、一社化による「共創」を推進しながら、職人街の伝統と風土を色濃く反映するオフィスである。